2017.08.14

Vol.19 渋い東京

五反田の静かなる戦場(卸売市場) 「TOCビル」の正体

日本最大級の卸売り市場「TOCビル」は、静かなる戦場!?


五反田にひと際目を引く渋い建物がある。その名も、「東京(T)」、「卸売(O)」、「センター(C)」の頭文字を取った「TOCビル」。1970年に開館した日本最大級の卸売りセンターだ。13階建てのビル内には、約380店もの店が立ち並び、家具やベッド、照明などのインテリアグッズから、美術工芸品、食器、植木、洋服、バッグ、靴、コスメ…果ては、化石まで、ありとあらゆるモノを取り扱っている。

そもそもは、お店を営んでいる方が買いに来る場所。素人が行って、何が面白いのだろうか?そんな疑問を感じながら、TOKYOWISE編集部で実際に取材…いや、TOCツアーが開催された。

五反田駅から無料バス




五反田駅についたぞ〜!さあ、TOCビルはどこだ?と見渡すも無い。なんとTOCビルは、五反田駅から道のりで800m程離れた場所に立っていたのだ。歩いて10分くらいだが、ハイヒールの女子もいたところで徒歩を断念。タクシー乗り場で彷徨っていたところ、なんと五反田駅西口を出たところに無料バスがあることを発見!このバスは10分間隔で運行しているそう。

圧巻のTOCビル




バスに揺られ5分程してTOCビルに到着。平日だというのに様々な人が行き交う。スーツ姿の人、私服の奥様たち、親子連れ、ご年配の夫婦の方々…。みんな何しにここにきているのだ?
そう、冒頭でもお伝えした通り、ここは「卸売りセンター」であり、仕事場なのだ。お店を持つプロの人が買い付けに来ることもあるし、ここに会社を構えて働いている人もいる。なのにデパートくらい広い入り口からは、そんな厳粛な雰囲気はなく、むしろ誰でもオ〜プン!に見える。子供だったら叫んで走り出したくなるような、広い廊下は親子連れも楽しいに違いない。

それぞれの店舗は、もちろん小売業者だけでなく一般客にも販売してくれる店舗もある。一部小売業者の方のみ販売の店舗もあるのだが、一般人の私からは見ているだけで十分に楽しい。ただ、あまり物色しすぎるのは控えた方が良いかも。仕事をしにきている人たちがほとんどなので、冷やかしはやめましょう。
本来であれば、様々なお店を回ったレポートをしたいところなのだが、「卸売」が基本なので、ここで掲載はNG(当然なことと思います)。ぜひ、皆様に実際に回って確かめてみてほしい。

屋上&飲食街は、唯一、ホッとできる場所




エレベーターで最上階の13階まで上がり、さらに階段を上ると屋上に着く。ゴルフ場の「フタバゴルフガーデン」と氷川神社以外、これといった施設はないが、東京タワーが臨める広々とした空間は、妙に落ち着く。そんな気分になるのは、一般客として、階下は気の抜けない場所だから。ぽつりぽつりと置いてあるベンチには、デート中とおぼしきカップルの姿も。この日、一番ホッとした瞬間だ。



地下にある飲食街も和める場所。中でも、お薦めしたいのは、“名物・ニクシチ”で知られる「食事処 志野」。ニクシチとは、豚肉七味炒め定食のこと。七味で炒めた薄い豚バラ肉というシンプルな味だが、口に入れた瞬間、ふわっと香る七味がクセになる。接客はやはり素っ気なかったが、この味を求めて、毎週のように通う人もいるそうだ。

TOCビルは、モノを見る目と勘を鍛えてくれる道場


「今流行りのアイテムはコレ!」と、誰の目にも分かりやすく次々と提案してくれる量販店や、美しいウィンドウ・ディスプレイで通行人を魅了するデパートなどは、確かに便利で手っ取り早い。あちら側(売る側)が良いと提案するものを素直に受け取ればいいわけで、あとは予算との相談だけだから。でももし、そんな効率的な世の中にちょっと飽き飽きしているなら、TOCビルに出かけてみてはどうだろう?

誰も干渉してこない店で、自分のセンスや知識や経験だけを頼りに買い物するのは、ある意味、過酷な闘いだが、納得のいく戦利品がきっと見つかるはずだ。

「TOCビルとは、本当に買うべき価値があるかどうか、モノを見る目と勘を鍛えられる場である」ーたった一着、激安のスウェットを手に入れた私は、この日そんなことを思った。



TOCビル
https://www.toc.co.jp/

(Text:TOKYOWISE編集部)
(Photo:Masashi Nagao)

2017年8月17日修正:五反田からTOCまでの距離を800mのところ800kmと記載しておりました。訂正してお詫び申し上げます。

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